Summilux 50mm f1.4のOH(1)

曇りはありませんが、カビが。。。



Summilux 50mm f1.4 2nd、ブラッククロームの1972年製のレンズです。貴婦人と呼ばれているシルバークロームとは別物。
いわゆる前玉に「空気レンズ」を採用したレンズです。


全体的にコンディションは良いのですが、前玉と後玉にカビの菌糸が確認できましたので、コーティングなどに被害が及ぶ前に、
・レンズのクリーニング
・絞りの油染みのクリーニング
・ヘリコイドグリースの交換
を行いました。
絞りの軽い油染みは動作に影響があるほどのものではありませんが念の為、また、ヘリコイドがフィールドでのピント合わせが苦痛なほど重くなっていましたので、グリスを交換しました。


まずは、レンズに発生したカビをクリーニングして行きます。


前玉のカビです。
恐らく、前玉の裏、又は空気レンズ側に発生していると思います。



金色?のコーティングがとても綺麗ですね。


後玉のカビです。



表面なら良かったのですが、前玉と同じく、レンズとレンズの間でした。
※表面なら拭いていますよね(w


それでは、バラしていきます。

※《注意》この記事では、分解の手順を詳細に公開していますが、オーナーでの分解を推奨しているわけではありません。
当手順をご覧になり、分解されて元に戻せなくなったり、レンズが破損しても、当サイトは責任を負えません。
また、一旦、分解したレンズは組み付け後、調整が必要になります。
作業には、それなりの知識と道具が必要ですし、製造時期によって、構造が異なる場合もありますので、プロに依頼される事をお勧めいたします。


まず、鏡胴の先端部(フードが噛み込む部分)と、マウント部を持って捻ると、ヘリコイド部(左)とレンズユニット(右)に分割できます。
※絞り環を掴むと後で説明しますが、絞り動作環に掛かっている動作用のネジに負担がかかります。
最悪折れるかもしれませんので、先端部を持ちましょう。



※鏡胴の先端は持ちづらいので、ゴムの吸盤オープナーなどを使用します。


レンズを鏡胴から外してクリーニングしていきます。
まずは、絞りよりマウント側のレンズから取り外していきます。



図の①の部分の(A)から取り外していきます。


カニ目で、レンズを傷付けないように注意しながら、後玉を鏡胴に押さえている「押さえ環」を外します。





「押さえ環」を外すと、合わせレンズ2枚が取り出せます。
どちらのレンズも、曇り、バルサム切れは無さそうです。



レンズサッカーで、傷付けないように持ち上げます。
(A)は乗っているだけ、比較的簡単に外れますが、(B)は少しキチキチに嵌め込んであるので、大きめのレンズサッカーでないと取り外せないかもしれません。
もし外れなかったら、前玉を外した後、絞りオープンで前玉側から押せば外せますので置いておきましょう。。。


後玉が2枚取り外せ、絞りまで何もない状態になりました。



カビは、(A)のレンズの裏側に発生していました。レンズクリーナーと無水アルコールで取り除くことができました。
コーティング剥がれも起こしませんでしたので、ラッキーでした。


その先には絞りを通して、前玉群が見えます。
前玉のカビは残念ながら、絞り側ではなく、最前面のレンズの内側、または、空気レンズの前面または、内側の様です。


続いて、「絞り動作環」の手前の押さえ環を外します。
ぱっと見、芋ねじが入りそうな穴がありますがねじ止めされていません。
ゴム手袋などで撚れば、外れます。





次に「絞り値環」の「押さえ環」を外します。
こちらもカニ目を使って外します。奥まった所にありますので、先ほどの素手で外した押さえ環を外さないとアクセスできません。





次に、絞りの値が彫ってある「絞り値環」を外します。
まず、環のローレットの中に1箇所ついている芋ネジを外します。小さなネジなので、無くさないように注意してください。





「絞り値環」をフード側(レンズ前方)にゆっくりずらしていくと、写真のような板バネが出てきます。
この板バネの下には、小さな鋼球が入っています。飛んでいくと絶対に探せません(w
注意して外していきます。
※板バネは過去に何度か飛ばしたことがあります(w





板バネを外すとこのような状態になります。
小さく銀色に輝いているのが鋼球です。とても小さいです。。。





次に、前玉を外していきます。



②のレンズです。


「レンズ銘板」をゴム吸盤オープナーか、カニ目で外します。
※レンズ銘板の切り欠きは、カニ目には大きいので、傷をつけてしまうかも知れません、ゴムの吸盤オープナーを試して、回らなかったらカニ目を使いましょう。



一番外側のレンズは、「レンズ銘板」で固定されています。
レンズの上に、細いワッシャ(素材不明)が載っていますので、先細のピンセットなどを使って、破損しないように注意して取り出して下します。


さて次は、「絞り値作動環」を外します。
鏡胴の中にある「絞り開閉環」に「絞り値作動軸ネジ」として捩じ込まれているネジ2本を取ると、「絞り値作動環」を後方(マウント側)に抜くことができます。



上から、鋼球、板バネ、絞り値作動軸ネジ、絞り値作動環です。


絞りのクリック感を出すための溝があります。埃などが溜まって汚いです。
クリーニングしておきます。





続いて、前玉ユニットを外します。



③の部分です。


フードが付く部分と、鏡胴を持って捻ると前玉の空気レンズ部分が取り外せます。
この時、前玉が上を向くように置いて分離しましょう。



遠近法で空気レンズ部が小さく見えますが、同じ径です。
この時、空気レンズのユニットで、「絞り開閉環」を抑えていますので、反対を向けて外すと、最悪の場合、絞り開閉環と絞り羽根が、バラバラと落ちて途方にくれる事になるかも知れません。
※まあ、結局バラす場合は良いかもしれませんが、絞りバネが傷ついたり、絞り開閉環の反射防止の塗装が剥がれたりするかもしれません。


空気レンズのユニットは押さえ環を手で緩めると分離できます。





外れました。





さて、気合を入れて、絞りをクリーニングしていきます。
空気レンズユニットと、「絞り開閉環」の間に、細いワッシャが入っていますので、注意して外します。
「絞り開閉環」はそのまま、持ち上げると取り外せます。



この状態で絞り羽根の動作用ダボをピンセットで掴めば、取り外せますが、それぞれ重ね合ってセットされています。
初めて分解するときは、こまめに写真で記録しておいて下さい。


注意深く取り外すと、12枚のブーメラン型の絞り羽根が取り出せます。



動作に影響があるほどではありませんが、油が見えますし、錆もありそうです。


鏡胴側にも油分が残っていると、また染み出してきますので、綺麗にします。





絞り羽根をクリーニングしたところ、少し茶色くなりました。
わかりにくくても錆びているようです。





「絞り開閉環」も綺麗にしておきます。





よく見ると「絞り開閉環」の表側の乱反射防止の墨がハゲています。過去のメンテの際、傷付けたのでしょう。
あとで墨を塗ります。





さて絞りのクリーニングが終わったら、組み付けです。
文字で説明するのは難しいですが、私は写真のようにレンズサッカーで押さえながらバラけないように組み付けています。





全ての羽根が鏡胴にセットできたら、今度は「絞り開閉環」の取り付けです。
「絞り開閉環」はどの位置でもいいわけではなく、Max絞りの状態で動作用のネジが鏡胴の停止位置に来るようにセットします。
レンズサッカーで押さえた状態で、1枚づつMax絞り位置に動かします。





上から制御リングをセットして、動作用のダボが溝に入った事を確認して、動作用ネジで仮止めします。
動作も良さそうです。
《F1.4:解放》





《F16》





後ろ玉側から見ても、油染みもなく綺麗です。





あとは、クリーニングしたレンズを埃の混入に注意しながら逆の手順で組み付けていきます。
レンズの座りが悪い状態で組み付けると、光軸がずれて大変な事になります。
組み付けたあとで、拭き残しや、埃を見つけて、ため息混じりにやり直さずに済むよう注意して作業します。


1枚、1枚、拭き残しや、埃を確認しましょう。
組み付けで一番大変なのは、絞り羽根でしょうね。。。。




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